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2012年4月 leaf_img仙腸関節のMRI所見を用いた軸性脊椎関節炎の診断
 

 軸性脊椎関節炎(Axial SpA : axial spondyloarthritis)の診断を確実に行うことにより、強直性脊椎炎の仲間が増えてきました。 2009年頃から欧米のリウマチ学で採用され、治療の新たな出発点にもなっています。 昨年、軸性脊椎関節炎の分類基準を掲載しましたが、今回はその項目のなかで、ポイントとなる仙腸関節MRIの評価方法を記しました。

 MRIのなかで脂肪抑制法として用いられているのはshort τ inversion recovery (STIR)です。仙腸関節は、冠状断の像で評価します。両側ともSTIRが高信号なら軸性脊椎関節炎と診断され、片側だけSTIRが高信号の場合は連続した冠状断の2スライスで、STIRが高信号であれば、軸性脊椎関節炎と診断することになっています。

 改正ニューヨーク診断基準では通常X線写真から強直性脊椎炎が診断されますが、この場合、両側グレード2から4であること、あるいは、片側だけの場合、グレード3か4であれば強直性脊椎炎と診断されています。基本となる考え方はこれを受け継いでいると言ってよいでしょう。

 今年中に現在調査中のAxial SpAの頻度をご紹介致します。

軸性脊椎関節炎分類基準 更新 >軸性脊椎関節炎分類基準 更新

(参考文献)
Sibel Z Aydin, W P Maksymowych, A N Bennett, et al
Validation of the ASAS criteria and definition of a positive MRI of the sacroiliac joint in an inception cohort of axial spondyloarthritis followed up for 8 years Ann Rheum Dis 2012;71:56-60


2011年8月 leaf_img軸性脊椎関節炎分類基準
 
2009年にヨーロッパのリウマチ学専門誌に脊椎関節炎の新しい分類基準が発表されました。これによりますとレントゲン所見では仙腸関節炎が明確でなくともMRIで急性炎症が証明されると軸性脊椎関節炎と診断されてよいことになります。昨年、フィンランドの医師と交流した際に日本の実情にも興味を持ってくれましたが、現在ではMRIを用いた診断が盛んになり、生物学的製剤もよく使われているとコメントしておりました。

軸性脊椎関節炎分類基準

  3ヶ月以上続く腰背部痛,発病時が45歳未満
 I: 画像診断で仙腸関節炎がみとめられること*
   加えて 脊椎関節炎の特徴が1つ以上**
II: HLA-B27が陽性
  加えて 脊椎関節炎の特徴が2項目ある**
<上記の I または II>
     
*X線あるいはMRIによる仙腸関節炎
  仙腸関節炎が両側2度ないし4度,もしくは片側3度ないし4度である.
       (1984年強直性脊椎炎改正ニューヨーク診断基準による)
  MRIにより活動性(急性)仙腸関節炎がある***
   
高度に脊椎関節炎を示唆するものとして次の特徴に注意する。
**脊椎関節炎の特徴
  1,炎症性背部痛(専門医の診断)
2,脊椎外特徴:関節炎,付着部炎(踵),ぶどう膜炎,指炎,乾癬,
    クローン病あるいは潰瘍性大腸炎
3,NSAIDs に良く反応する
4,脊椎関節炎の家族歴
5,HLA-B27が陽性
6,CRPあるいは赤沈の亢進
   Rudwaleit M, van der Heijde D et al. Ann Rheum Dis 2009

*** MRI の評価法
T1と T2は慢性の構造的な病変を評価できる。 STIRのような脂肪抑制法、および、T1ガドリニウム造影法は急性炎症をみることに役立つ。しかし、診断には造影は有用ではなく、仙腸関節炎の確実な診断には両側仙腸関節にSTIRのような脂肪抑制法で明確な炎症が認められなければならない。

2011年3月 leaf_img線維筋痛症の新しい分類基準
 

2010年線維筋痛症の新しい分類基準が発表された。この分類基準では圧痛点の記述がなく、疼痛症状の評価と関連した症状の重症度を採用している。

新しい線維筋痛症分類(予備)基準 (Wolfe F et al. 2010) 次の3つの条件が当てはまれば,線維筋痛症の分類基準をみたす。
① 広範囲の疼痛指標(widespread pain index :WPI)が7個所以上当てはまり, 症状の重症度(symptom severity: SS)スコアが5以上となった場合,あるいはWPIが3~6個所でSSが9以上となった場合。
②これらの症状がすくなくとも3ヶ月以上続いていること。
③疼痛を証明するほかの疾患がないこと。

広範囲の疼痛指標(widespread pain index :WPI) 患者が過去1週間以上にわたり,全身19個所*のうち痛みが続いている部位を記入し,それが何カ所あるかを記入する。スコアは0~19の値となる。

症状の重症度(symptom severity: SS)スコア  疲労感(Fatigue),起床時にすっきりしない感じ(Waking unrefreshed), 認知症状(Cognitive symptoms)の3つについて,過去1週間の重症度 レベルを次の尺度をつかって示すこと。          
      0=問題なし  1=やや問題あり,ゆるやかで一時的な程度          
      2=かなり問題あり,しばしば現れ,中くらいの程度      3=ひどい,広範囲で持続的で,生活上の問題が生じている

次に,一般的な身体症状を患者がもっているかどうかを,次の尺度をつかって示すこと。  
      0=症状なし 1=2~3の症状あり 2=中等度の症状あり 3=多数の症状あり

SSスコアは,上記3症状(疲労感,起床時にすっきりしない感じ,認知症状)の重傷度のスコアと,一般的な身体症状の程度(重症度)を合計する。結果的には0~12のスコアとなる。

* 全身19カ所の疼痛部位 左肩 右肩 左上腕 右上腕 左前腕 右前腕 左股関節 右股関節 左大腿 右大腿 左下腿 右下腿 左顎関節 右顎関節 左背部 右背部 胸部 腹部 頸部 以上19ヵ所

Wolfe F, Clauw DJ, Fitzcharles M et al: The American College of Rheumatology Preliminary Diagnostic Criteria for Fibromyalgia and Measurement of Symptom Severity Arthritis Care & Reseach 2010; 62(5):600-610


2009年10月 leaf_img「臨床医のための線維筋痛症」の発刊にあたって
 

「臨床医のための線維筋痛症」 著者 浦野房三

  昨年の「症例から学ぶ脊椎関節炎」に続き、今年は線維筋痛症を中心に執筆した。線維筋痛症の方が後になったのは、線維筋痛症の診断に隠れて、脊椎関節炎が多数存在することを示したかったからである。
 
 欧米のリウマチ科外来では全患者の20~30%を線維筋痛症が占めているといわれる。最近、日本でもこの病名が様々な経緯を経て知られることになった。線維筋痛症は研究者の間でもそれぞれの医師の考え方にかなりの幅があり、本疾患が国内に浸透するに従い、様々な問題が出現してきている。
 一人の患者を診るにあたり、他の疾患が併存していることがあり、すべての症例が線維筋痛症の単独発症とは言い難く、根底にあるものに気づかれなければ治療が充分に施されず、症状がいたずらに長期化することもある。
 アメリカリウマチ学会の分類基準では他の疾患があっても線維筋痛症は除外されないという表現がされており、線維筋痛症と診断することは誤りではないが、他の疾患が根底にないかを探すことは非常に重要な医療行為であると考えられる。
 治療の基本は受容的かつ共感的に接しているかどうかがまず問題である。線維筋痛症の疼痛部位は多部位であり、時期により移動することがある。また、疼痛強度では日内変動がみられることが多い。医療側がこれらの状況を受け入れねば治療関係が成立しない。受け入れられない場合、ドクターハラスメントに等しい状況となり、症状が増悪することが多い。また、整形外科、リウマチ科などの医療側の取るべき立場として、赤沈、CRPなどに異常所見がなく、また、他覚所見に乏しいからという理由で、心療内科、あるいは精神科に安易なコンサルテーションを行うことは慎むべきである。
 診断する場合について、線維筋痛症という診断だけでよいかという問題がある。各種運動器系疾患の合併がある場合はそれらを優先しなければならない。myofascial pain、 脊椎関節炎などは見過ごされやすい。線維筋痛症という診断はついていたが、脊椎関節炎の診断がついておらず、治療が不十分の症例もみられる。
 
以上、この10年以上にわたって行ってきた臨床研究を中心に、一般臨床医を念頭において、執筆した。各論では過去の学会発表、講演、投稿論文の一部も掲載した。 


2009年発行 B5判 94頁 定価2625円(本体2500円+消費税5%)ISBN9784880026909
株式会社新興医学出版社   〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-8  TEL 03-3816-2853 FAX 03-3816-2895


2008年11月 leaf_img強直性脊椎炎(AS)の新刊書発売
 

「the FACTS 強直性脊椎炎」 著者 Muhammad Asim Khan  監修 浦野房三 翻訳 田島彰子

    脊椎関節炎の代表格である強直性脊椎炎(AS)は近年、疾患概念の変革のため、予想以上に多くの患者が存在するといわれている。
    欧米だけでなく、アジアでもその潮流が認められる。自ら医師であり、AS患者でもある著者がAS患者を診る医師とAS患者にとって本当に必要なことを非常にわかりやすく実践的にまとめた。薬物療法、リハビリテーションまで、懇切丁寧に書かれている。
    患者、医療関係者向けに書店で販売される強直性脊椎炎の書物としては日本初と思われる。患者とその家族にも一読をおすすめしたい。   ●http://shinkoh-igaku.jp/mokuroku/data/499.html

2008年発行 A5判 158頁 定価2625円(本体2500円+消費税5%)ISBN9784880024998
株式会社新興医学出版社   〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-8  TEL 03-3816-2853 FAX 03-3816-2895


2008年9月 leaf_img線維筋痛症の合併がみられる脊椎関節炎の新刊書発売
  「症例から学ぶ脊椎関節炎 強直性脊椎炎、未分化型脊椎関節炎ほか」 著者 浦野房三

    広範囲に疼痛をきたす脊椎関節炎は医療関係者には病名は知られているが、診断方法が十分に行き渡っておらず、X線所見や検査で異常がみつけにくい疼痛は線維筋痛症とされ、十分な対応がなされていないのが現状である。
    本書では脊椎関節炎の症状、病態や関連の深い病気まで、その検査・診断、予後や治療法を実際の48症例を掲載し、わかりやすく解説した。その症例のほとんどは日常的にみられるものばかりである。
    本書は脊椎関節炎についてまとめた本邦初のテキストであり、日常臨床に役立つ好著となった。リウマチ性疾患を学ぶ先生方にぜひご一読をおすすめしたい。      
●http://shinkoh-igaku.jp/mokuroku/data/684.html

2008年発行 B5判 139頁 定価3885円(本体3700円+消費税5%) ISBN9784880026848
株式会社新興医学出版社   〒113-0033 東京都文京区本郷6-26-8  TEL 03-3816-2853 FAX 03-3816-2895

2008年1月 leaf_img抗炎症剤について
  脊椎関節炎でも線維筋痛症でも第一段階では主に抗炎症剤が使われることが多いと思います。抗炎症剤ではクリノリル、ナイキサン、オステラック、ロキソニン、ランツジール、インフリーS、ボルタレンなどが投与されます。 症状が軽い場合は頓用で内服することもよいでしょう。疼痛症状は一日のなかでも変動が著しい方もいらっしゃいます。また、気候、によっても疼痛レベルは変動します。軽い運動で楽になることもありますね。診察室では患者さんの疼痛レベルをできるたけ客観的に評価できるように工夫したいものです。

そのほかボルタレンサポ(25mg、50mg)、インダシン坐剤(25mg、50mg)、エパテック坐剤(50mg、75mg)などを頓用で使用できるように患者への教育も大切です。なかには湿布、あるいは軟膏などを併用することもよいでしょう。アドフィード、セルタッチ、モーラス、ボルタレンテープ、セクターゲル、ファルネラートゲルなど湿布や軟膏には自分で治療を施しているという安心感もあるようです。

患者さんによってはこの段階で疼痛がコントロールされることもあります。日常診療のなかで初診患者が通常の抗炎症剤が効かないと訴える例によく遭遇します。患者さんが自分の病状を理解し、治療に対しても積極的な意識が形成されると、数週間後には予想以上に疼痛が軽減されることがあります。

抗炎症剤は胃腸障害を生じることが多いので注意が必要です。脊椎関節炎の疼痛症状は1日のなかでも変動があり、早朝、痛くて眼が覚めたという例から、午後になると疼痛が増す例、疼痛性ショックで意識レベルが低くなる方など極めて様々です。筆者の経験では毎晩、疼痛性ショックで意識レベルが低下した症例もあります。関節リウマチに比して疼痛はどの程度かという質問をされることがありますが、少数例ですが、関節リウマチの疼痛を遙かに超えていた症例もあります。

近年、欧米を中心に胃腸障害の少ないCOX2阻害薬が発売されてきました。日本ではハイペン、モービックなどがこの薬剤にあたります。また、昨年、セレコックスという薬剤が発売され患者さんにはかなり評判がよいようです。

実はこのお薬には血栓を作らないようにする作用が少ないため、心筋梗塞や脳梗塞を起こす例が若干みられたので、発売がおくれていましたが、治療の効果が危険性を上回る場合には投与されてもよいという判断から、発売されています。2008年4月からは長期投与も可能となることが分かりました。いずれにしても、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすい状態にある方には注意して投与されるべきであると思います。
(警告)当ホームページに掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。 Copyright 2004 Fusazo Urano. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.
2007年4月 leaf_img透析患者さんにおける線維筋痛症
  篠ノ井総合病院には全国でも有数の人工腎センターがあります。ここで透析を受けている患者さんに対して、2004年および2005年の2回にわたって、線維筋痛症があるかないかの頻度を調査しました。アンケートに回答していただいた患者は173例でした。当院で透析を受けている患者さんの約7割にあたります。その中で、線維筋痛症と診断された患者さんは71人で41%にあたります。透析年数が長期になるに従って、線維筋痛症の合併頻度が増加していました。今回、透析患者さんにおける線維筋痛症について、免疫学などに関する調査を行いました。

最近、長期の透析患者さんにおいてMMP-3(Matrix Metalloproteinase-3)の増加が報告されています。長期間の透析患者さんでMMP-3が高い値を示す場合はなんらかの症状と関連していることが考えられます。長期間、透析を受けている患者さんで、MMP-3が高い値を示す場合は線維筋痛症の基礎に、多発性付着部炎あるいはアミロイド関節症を合併しているのではないかと考えておりました。また、透析患者さんの疼痛を各方面から検討することにより、痛み治療の方向性が見いだせるのではないかと考え調査を行いました。

今回は関節リウマチなどでも増加するMMP-3の測定です。線維筋痛症の病勢の解析のために、測定対象は女性のみとし、年齢は主に50代から60代としました。調査した人々は3つの群からなり、1群は線維筋痛症を合併した透析患者さん、2群は線維筋痛症がない透析患者さん、3群は健康な人です。

その結果です。1群は20人、2群は18人、3群は16人でした。平均年齢は1群が59.4歳、2群が58.7歳、3群が58.8歳であり、それぞれの平均年齢については統計学的に有意差はありません。透析期間は1群が19.5年、2群が7.6年で統計的にみると1群が有意に長期間でした(p=0.0305)。

MMP-3の平均値は1群が204.38ng/ml、2群が172.189ng/ml、3群が36.95ng/mlであり、1群と2群では有意差はありませんでした(p=0.2877)。一方、1群および2群とも3群の健康な人とは有意差がみられました(いずれもp<0.0001)。
 
透析の原因となった腎疾患について、比較を行ってみました。慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症などは両群で多数を占めていましたが、両群でのそれぞれの分布は統計学的に有意差はありません(p=0.5464)。既往歴および合併症の出現頻度は副甲状腺機能亢進症、あるいは、悪性腫瘍などは1群で高頻度でしたが、統計的には有意ではありませんでした。手術の既往歴について頻度を検討しましたが、胸腹部あるいは婦人科の手術は1群で高頻度であり、統計的に有意差がみられました(p=0.0004)。

整形外科およびリウマチ性疾患の既往歴の出現頻度では付着部炎(p=0.0004)、関節炎および関節症(p=0.0086)、そして、頚椎捻挫・脊椎疾患(p=0.0058)が2群にくらべて、1群で高い頻度を示しました。すなわち、線維筋痛症を合併している透析患者さんではこれらが高頻度であるということが分かったのです。

また、MMP-3は両群とも健康な人に比べて、高い値を示しており、骨関節炎を生じやすい状態が顕著であることが推測されました。また、骨関節の障害が出現することにより、二次的に線維筋痛症が生ずる可能性も考える必要があると思います。既往歴などの統計解析から、手術歴あるいは整形外科およびリウマチ科的疾患が線維筋痛症を持っている群に多いことがわかり、メカニカルストレスが線維筋痛症の病態をより悪化させている可能性がありそうです。透析患者さんにおいては腎疾患以外にも様々な状態が、痛みに関与していると考えられます。

なお、以上の研究は厚生労働科学研究補助金(免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業)の援助によりおこなわれました。今回記載した結果はその一部です。


2006年2月 leaf_img付着部指数(MEI : Mander enthesis index)について
  昨年から脊椎関節炎のお話をしておりますが、画像診断に話が偏ってきました。今回は画像診断を離れて付着部炎のお話をします。多発性関節炎あるいは多発関節痛という場合、一般には多発性滑膜炎のことを言うことがほとんどです。しかし、ここで忘れてならない事は多発性付着部炎です。ミシェル・マンダー(Michelle Mander)という研究者が1987年に英国のリウマチ科の雑誌に発表しています。この論文は欧米の教科書によく引用されています。

マンダーの論文を参考にお話します。彼は多発関節炎をみる場合、多発性滑膜炎と多発性付着部炎の両者に注意すべきであると述べています。この論文には診察すべき四肢と体幹の付着部の図が出ています。今回これを参考に図を作成してみました。圧痛のみられる部位には黒い点が印されています。特に脊椎棘突起に黒い点があるのに注意してください。

論文の中には圧痛のみられる付着部の場所があげてあります。本文には次の部位が記載されています。項部稜、胸骨柄体関節、胸肋関節(論文では肋骨肋軟骨関節)、上腕骨大結節、上腕骨内顆と外顆、腸骨稜、前上腸骨棘、大腿骨大転子、脛骨粗面、大腿骨内側の内転筋結節、大腿骨内顆および外顆、脛骨内顆および外顆、腓骨小頭、足底腱膜踵側付着部、アキレス腱、仙腸関節、頸椎棘突起、胸椎棘突起、腰椎棘突起、座骨結節、後上腸骨棘。このほとんどが図に示されています(一部省略されている)。
 
付着部指数(MEI)カウントの圧痛点
圧痛点
黒点は圧痛のみられる部位
(ミシェル・マンダーの論文の図を元に作成した。)
 
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この図に示された他にも顕著な圧痛がみられる部位があります。橈側手根屈筋腱、手関節内および外側の靭帯、足底腱膜母趾側、距骨下関節、足関節、膝蓋靭帯、胸鎖関節、嗚口突起、梨状筋腱、膝窩筋腱付着部などです。

付着部指数( MEI :Mander enthesis index)はこれらの圧痛点を考慮して作成されており、マンダーは圧痛のレベルを4段階にわけて、点数をつけています。

圧痛がない=0、 軽い圧痛がある=1、 圧痛がある=2、 強い圧痛(痛い表情をする、痛みが残存する)=3

30箇所について診察し、それぞれの部位にこの点数をかけ、合計90点が最大値です。お示しした図のなかで、項部棘、胸肋関節、仙腸関節、頸椎、胸椎、腰椎の6部位は複数の圧痛点がありますが、まとめてひとつのグループになっており、もっとも痛い部位で圧痛レベルをカウントします。それ以外の部位は左右それぞれカウントして12対、24箇所です。6グループと24箇所を合計して30箇所ということになります。

この論文では付着部指数と、疼痛、こわばり、赤沈との関係について相関係数を評価しています。付着部指数と疼痛との相関係数(スピールマン順位相関係数、例数19例)は0.67、付着部指数とこわばりは0.46でした。この二つは統計学的に相関がみとめられました。しかし、、付着部指数と赤沈は0.21で相関はありません。

引用文献
Michelle Mander, Judy M Simpson, Alison McLellan et al.:
Studies with an enthesis index as a method of clinical assessment in ankylosing spondylitis. Annals of the Rheumatic Diseases, 1987; 46, 197-202.



2006年1月 leaf_img脊椎関節炎のMRI所見
  2005年11月にアメリカ合衆国のサンディエゴで開催された、米国リウマチ学会(ACR)に参加してきました。そこでは線維筋痛症の演者のほか、脊椎関節炎(強直性脊椎炎)で高名なモハマッド・カーン教授とお話しすることが出来ました。カーン教授はご自身が12歳の頃、強直性脊椎炎に罹患し、以後辛い闘病生活を経験されているわけです。オックスフォード・ユニヴァーシティ・プレス社から発行されたthe Factという本の一つにカーン教授の書かれた一冊があります。この中に「強直性脊椎炎の症例が線維筋痛症とされていることがある」という一文があります。

学会場でその話をしたあと、メール交換をすることになりました。帰国後メールをさしあげましたら、早速、教授からメールの返事がきました。そのなかでMRIの所見が重要であると書かれていました。MRIで異常が見つかれば、まずは1次性の線維筋痛症ではありません。脊椎関節炎が画像診断で証明されたことになります。

脊椎関節炎の症例の画像診断のお話をつづけます。私の病院では、MRI検査は放射線科の専門医の力をお借りして行っています。読影はMRIについて相当に専門的な知識がありませんと判断が困難で、重要な情報が得られません。当院では長谷川放射線科医長に読影していただいております。

症例1.40代の女性。項部痛と右胸鎖関節痛を訴えている脊椎関節炎の患者さんです。通常のレントゲン写真ではその場所に明確な所見はありません。しかし、MRIの脂肪抑制STIRで高信号が明瞭です。右の鎖骨近位部には明らかな炎症像があり、浮腫性の変化が見られます。この方は四肢体幹に多発性付着部炎が顕著でした。


写真1
写真2
通常のレントゲン写真です。
とくに骨増殖像などは見られません
MRI、脂肪抑制STIR像です。
右鎖骨が白く見えます。左側と比べると明瞭です

症例2.50代 女性。3年ほど前から多発関節痛が出現。リウマトイド因子が高度陽性。関節リウマチが疑われていました。いつも右足の疼痛を訴えています。右踵骨、距骨など足根骨の骨髄にT1強調像で明らかな低信号、脂肪抑制STIRで高信号を認めました。骨髄の炎症性、浮腫性変化と考えられます。この方も全身の付着部炎がはっきりしており、脊椎関節炎です。ショーバーテストも陽性です

写真3
写真4
MRIT1強調像です。
踵骨の中央部に黒い場所が見えます
脂肪抑制STIRで高信号を認めます。
踵骨の中央部が白くぬけています

症例3.50代女性。多発性付着部炎と仙腸関節炎があり診断は脊椎関節炎です。下の画像は足根部のMRI脂肪抑制STIRです。アキレス腱前面の脂肪組織内に高信号をみとめ、踵骨にも高信号を認めます。

写真5
アキレス腱前方の脂肪組織が白く写り、
踵骨の上方、下方、および、後方に白い場所がみられ、骨髄の炎症が考えられます

線維筋痛症と脊椎関節炎は病気のなりたちが全く異なります。線維筋痛症だけの場合は多発性付着部炎を起こすことはなく、画像所見で確認されることはありません。また、脊椎関節炎の治療は線維筋痛症とは異なりますので、注意が必要です。
(警告)当ホームページに掲載されているあらゆる内容の無許可転載・転用を禁止します。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約によって保護を受けています。 Copyright 2004 Fusazo Urano. All rights reserved. Never reproduce or republicate without written permission.
2006年新年号 leaf_img脊椎関節炎の薬物療法
  治療は薬物療法とリハビリテーションの二つに分けられますが、今回は主に薬物療法について記します。薬物の種類によって次のような段階に分けてみました。疼痛症状が充分に改善できない場合は段階を上げてゆくことになります。それぞれの段階の薬物は副作用の問題もありますので、患者さんの理解と決断が必要となります。

第一段階では主に抗炎症剤が使われます。 
抗炎症剤ではクリノリル、ナイキサン、オステラック、ロキソニン、ランツジール、インフリーS、ボルタレンなどです。 つぎのような座薬も効果があります。ボルタレンサポ(25mg、50mg)、インダシン坐剤(25mg、50mg)、エパテック坐剤(50mg、75mg)など。また、湿布や軟膏の併用も時には効果的です。アドフィード、セルタッチ、モーラス、ボルタレンテープ、セクターゲル、ファルネラートゲルなどです。

大半の方はこの段階で疼痛がコントロールされることが多いと考えています。しかし、高度の疼痛症状はこのような通常の抗炎症剤では改善しないことがあり、その症状を改善させるために第二段階としてステロイド剤を投与することもあります。急性症状には点滴、あるいは、静脈注射の方法があります。一般的にはプレドニゾロンの内服をしていただきます。内服の1日量は3mg程度の低量から時には15mg以上も必要な場合があります。関節の腫脹が著しい場合は、関節内注射を行います。デポメドロールなどを関節穿刺の針から注入します。脊椎関節炎の30%から40%の方は関節が腫れてくると言われています。

第三段階としては抗リウマチ薬のアザルフィジンEN(500mg)を使用します。通常、関節リウマチでは1日に1錠から2錠まで投与されますが、この疾患の場合、容量を上げる必要もあります。効果が出るまでには2~3ヶ月かかる場合が多く、効果が有る方(有効率)は60から70%程度ではないかと考えています。欧米では最大3000mgまで投与されます。

第四段階では免疫抑制剤のリウマトレックス(メソトレキセート)が投与されます。我が国では関節リウマチの治療として週に1から4カプセルまで投与されています。この病気に対しても効果があります。

第五段階は生物学的製剤(レミケード、エンブレルなど)です。抗TNF療法ともいいます。我が国ではこの疾患に対して保険適応がありません。また、この病気に対して投与されている施設は非常に少ない状況です。欧米諸国ではこの抗TNF療法に関する報告が数多くされています。脊椎関節炎に対する有効率は60%程度と言われています。関節リウマチには90%程度の効果がありますが、脊椎関節炎では有効率が低くなります。また、この薬剤は第四段階までの治療で効果が得られない患者さんに投与されるべきであると言われています。薬物の値段が非常に高価であることは医療経済学上重要な問題です。

そのほか線維筋痛症を合併している場合は次の薬剤を併用することもあります。抗うつ剤として投与されているドグマチール、トリプタノール、ルボックス、パキシル、トレドミンなどを併用します。しかし、逆に線維筋痛症の単独発症として、このような薬剤を投与しても、効果が充分で無い場合があります。その場合は多発性付着部炎を確認し、脊椎関節炎の精査する必要があります。
第一段階から第五段階の薬物の効果などを述べましたが、副作用などの問題がありますので、次の機会に述べたいと思います。



2005年8月leaf_img線維筋痛症と脊椎関節炎の合併  第2回
 

前回に引き続いて脊椎関節炎の話を続けます。
線維筋痛症と脊椎関節炎は全く別の病気です。脊椎関節炎がもとにあって線維筋痛症を起こした場合は二次性の線維筋痛症とします。前回から続けて脊椎関節炎のお話を続けるにはそれなりの理由があります。

日本では最近、ようやく線維筋痛症が一般にも広まり始めました。まだ、充分とはいえないのですが、もうひとつ市民権が充分に得られていない病気があります。脊椎関節炎です。これは線維筋痛症を研究している医師から見ると、取るに足りない問題のように扱われがちです。私は現在の状況は仕方がないが、近いうちには多くの医師に認識していただきたいと思っています。

私の外来には、最近注目を浴びている線維筋痛症ではないだろうか、と心配されて受診される方が毎日来られます。国内の遠方からも、この長野市の地を訪れる患者さんは後を絶ちません。ところが、遠方から来られる、ほとんどの患者さんは線維筋痛症の単独発症とは言えない状態です。

最近、長野県内から前回の記事をご覧になって受診された方がいらっしゃいました。まさに全身に多発性付着部炎が著しく認められ、下肢の一部が痛いので杖をついておられました。ご本人とご家族の予想の通り、脊椎関節炎でした。現在、治療中です。

線維筋痛症は広範囲の疼痛症状をきたす慢性疾患で、疼痛部位に対する普通のレントゲン写真やCTスキャン、あるいはMRIなどの画像検査を行っても異常がないと言われています。

1990年代にはフィツチャールスという研究者が線維筋痛症と診断された症例に対して腰椎のショーバーテスト(前屈で15センチ以上に伸びる検査)を行いました。これは脊椎関節炎を見極める重要な検査です。その結果、線維筋痛症と診断された35例のうち11例は脊椎関節炎でした。

国際リウマチ学会の研究者が中国で調査を行いました。その結果、脊椎関節炎の中国人の有病率は0.26%でした。この数字は一般の方から考えると低い数字と思われるでしょうが、欧米の白人の有病率とほぼ同等なのです。また、関節リウマチの有病率はどのくらいかと申しますと、これは日本でもだいたい0.5%なのです。比較してみて如何でしょうか?関節リウマチと比べて、やや低い程度ですね。半分の数字です。

症状の見極めは靱帯付着部炎と仙腸関節炎があることです。脊椎関節炎の著明な研究者である米国ケース・ウエスタン・リザーブ大学のカーン教授の著書には脊椎関節炎が線維筋痛症と誤診されていることが多いと記されています。

近年、欧米では広範囲の疼痛を訴える患者さんに対して、多発性付着部炎の観点から検査を行い、線維筋痛症との合併や違いについて検討した論文がかなり見られるようになりました。今まで普通のレントゲン写真では目立つ異常がない脊椎関節炎に対して、充分な医療が供給されなかったという事実が根底に流れています。

今回は典型的な強直性脊椎炎のレントゲン写真と三次元CTをお見せしましょう。すべての患者さんがこのように典型的な写真であれば、診断に苦労することはありません。

脊椎関節炎(強直性脊椎炎)の典型的な写真です。脊椎ではsyndesmophyteがみられ、CTと3DCTの写真では仙腸関節が癒合しています。しかし、大多数の患者さんではこのような典型的なレントゲン像が見られることは少なく、わずかに仙腸関節炎がみられるのみです。
写真7
写真8

最近の欧米で出版された報告をみると線維筋痛症との判別に工夫を凝らしているものが多いと思います。ランベルトは付着部炎性脊椎関節炎の立場から四肢の靭帯、あるいは、腱の付着部のMRI所見の検討を行っています。その論文では各種の所見がみられたと報告しています。

MRIの所見から脊椎関節炎に対する見方が欧米では徐々に変容を遂げています。線維筋痛症と見られていた患者さんが、ある時期に上肢、あるいは、下肢の腫れ、もしくは、むくみが出現することがあります。時には、赤沈やCRPなどの炎症マーカーが上昇したりします。また、滑膜由来の関節炎マーカーであるMMP-3が上昇したりします。MMP-3は現在、関節リウマチの検査とされていますが、乾癬性関節炎でも上昇します。私が治療している脊椎関節炎の患者さんでも正常範囲を超える方が相当数見られます。

このような患者さんに対して、CTやMRIなどの検査を行うと仙腸関節炎、あるいは、付着部炎が確認されることがあります。この場合、線維筋痛症は続発性線維筋痛症ということになります。ですから、純粋に一次性の線維筋痛症かどうかを見極めるには、脊椎関節炎との違いを見極めること、あるいは、併存を確認することが大切だと思います。

患者さんを見極める場合、一次性線維筋痛症と二次性線維筋痛症について分けることは最近、重要視されていませんが、現疾患を見極めることは重要ではないでしょうか?一次性線維筋痛症は関節リウマチなど膠原病あるいは脊椎関節炎の合併がないもの。二次性線維筋痛症は、関節リウマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、強皮症などの膠原病、そして、分類不能あるいは付着部炎性脊椎関節炎、乾癬性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、腸炎性関節炎、ライター症候群、ブドウ膜炎由来の関節炎、反応性関節炎など脊椎関節炎に続いて起った症例です。

診断についてはどのようにしたらよいのでしょうか。医療関係者もご覧と思いますので私が行っている診察方法を述べましょう。アモール診断基準、ヨーロッパ診断基準、ニューヨーク診断基準などをもとに診断するとよいでしょう。それに加えて、付着部炎の確認など理学所見がやはり大切です。

理学所見ではまず、線維筋痛症についてはアメリカリウマチ学会の分類基準にそって、圧痛点の確認を行います。次に多発性付着部炎の確認です。診察部位は下記の部位について、四肢、体幹の圧痛と腫脹を確認します。全身では数10箇所になります。
足底腱膜母趾側と踵側、距骨下関節、足関節、膝蓋靭帯、膝内側および、外側副靭帯、腸骨稜、腸骨棘、股関節、恥骨結合、嗚口突起、肩峰下粘液包、胸骨関節、胸鎖関節、鎖骨、肋骨、頚椎棘突起、胸椎棘突起、腰椎棘突起、坐骨結節、梨状筋腱、仙腸関節、膝窩筋腱付着部、アキレス腱、肘関節内側および外側側副靭帯、手関節では手根屈筋腱、などの圧痛の確認。その他、頚椎伸展制限、Erichsen test、ショーバーテストが大切です。これらの部位の診察は慣れれば数分で済みます。また、カルテに書くにはこれらの様式を印刷した書面を作っておくと仕事がスムーズです。

アキレス腱のエコーの所見が欧米で報告されています。アキレス腱付着部の疼痛およびアキレス腱周囲の腫脹を認める症例が数多く存在し、アキレス腱の腫脹、あるいは石灰化、踵骨付着部のlow echoが見られることがあります。

靭帯や腱などの付着部炎のMRI所見が重要です。後足部の関節炎、骨びらん、骨癒合、関節液の貯留、骨髄内の浮腫、靭帯の炎症、など骨内、あるいは、靭帯周囲の炎症が確認されることがあります。脂肪抑制のSTIRで撮像すると描出されることが多いようです。
アキレス腱、足根関節、肩腱板、などの靭帯炎を確認するのに有用です。

MMP-3は関節の滑膜で産生され、軟骨を破壊する悪玉です。関節リウマチの患者さんで異常に高い値が出るので、関節リウマチの診断に使われます。その他、乾癬性関節炎でもMMP-3が患者さんの70%程度上昇するといわれています。一方、線維筋痛症の患者さんでも高い値が出ることがあります。線維筋痛症では赤沈あるいはCRPが上昇することはありません。これは線維筋痛症の単独発症ではなく、脊椎関節炎が合併していることが予想されます。

CT検査の重要性について述べます。画像検査により脊椎関節炎の存在をある程度まで確認することができます。通常のレントゲン検査でも仙腸関節の不整、硬化、あるいは、脊椎の靭帯棘(syndesmophyte)、椎間関節の癒合などがみられます。しかし、仙腸関節炎は通常のレントゲン写真では明確にでないことも多いので、CT検査を追加することを推奨します。

そのほか、HLA抗原の問題があります。従来、強直性脊椎炎に認められるといわれていたHLA-B27はよく知られています。しかし、私が今の病院で100名以上にHLA検査を行いましたが、B27は1名のみです。しかし、この方は日本人ではありません。日本人ではゼロでした。HLA-B27の出現頻度は日本人では非常に低いと考えています。日本人のHLA-BのタイプではB7、B35、B51など、B27以外の他の型が数多く出現していました。

脊椎関節炎と線維筋痛症を併発しており、線維筋痛症だけの治療ではなかなか改善が得られない状態の患者さんは全国的にはかなり多いのではないかと思います。脊椎関節炎の治療も平行して行って、初めて改善が得られる場合もあります。また、両者を併用してもなかなか改善が得られない患者さんがいらっしゃいます。次回は治療について考えてゆきましょう。

引用文献
・Fitzcharles MA:The overdiagnosis of fibromyalgia syndrome. Am J Med 1997
Jul;103(1):p44-50
・Muhammad Asim Khan: Early symptome.  Ankylosing spondylitis. the fact,
New York, Oxford University Press, 2002.p13-17
・行岡正雄、七川歓次:  リウマチ病セミナーXIV 2003.p49-58
・アメリカリウマチ学会編、血清反応陰性脊椎関節症. リウマチ入門(第12版) 編集:日本リウマチ学会(萬有製薬)
・Wigley RD : Rheumatic Diseases in China: ILAR-China Study Comparing the
prevalence of Rheumatic Symptoms in northern and southern rural population.
 J Rheumatol. 21:8,1484-1490, 1994
・Lambert RG et al. : High prevalence of symptomatic enthesopathy of the
shoulder in ankylosing spondylitis: deltoid origin involvement constitutes a
hallmark of disease. Arthritis Rheum. 2004 Oct 15;51(5):681-90.
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2005年 leaf_img血清反応陰性脊椎関節炎と線維筋痛症
  血清反応陰性脊椎関節炎(以下、脊椎関節炎と略)とは脊椎、仙腸関節、四肢の関節をおかす慢性炎症性疾患です。整形外科医あるいはリウマチ専門医には強直性脊椎炎という名前で昔から知られています。現在、強直性脊椎炎という語はこの病気を適切に表現していないと考える研究者も多く、強直性脊椎炎という言葉は以前ほど頻繁には使われなくなりました。また、血清反応陰性という意味はリウマトイド因子が陰性であることを示しています。しかし、リウマトイド因子が陽性の患者さんも少数ですが、受診されています。私の経験では昭和60年頃からずっと治療している患者さんでAさんという方がいます。この方はリウマトイド因子がいつも陽性です。私はAさんを関節リウマチとしては変だと思いながら数年前まで治療していました。数年前にようやくこの病気だということに気づきました。

患者さんは項部痛、背部痛、腰痛、臀部痛、下肢の疼痛を訴えることが多く、痛みの訴え方は線維筋痛症とよく似ています。関節が腫れる場合は下肢の関節が多いのですが、時には手指も腫れることがあります。脊椎関節炎のアモールの診断基準にもありますが、指がソーセージのように太く腫れることもあります。時には指の第1関節が腫れて、へバーデン結節と見分けが難しいこともあります。また、第2関節の腫れの場合は関節リウマチと紛らわしいのですが、ブシャール結節のように硬い腫れがみられます。両手指が罹患して、関節リウマチのように紡錘形に腫れることはありません。

赤沈あるいはCRPなどが病気の勢いを示さないこともあります。関節リウマチではほとんどの患者さんでこれらが基準値を超えて、高い値を示しますが、この病気の場合、関節が腫れているのに赤沈やCRPが全く亢進しなかったり、一方、全く腫れがないのにCRPが異常に高い場合があります。この理由はまだ解明されていません。

脊椎関節炎で初めに炎症を起こす場所は、腱や靱帯が骨へ付く場所、すなわち付着部です。この部位の炎症を付着部炎といいます。全身広範囲に痛みを訴えている患者さんを診察しますと、四肢や体幹の多くの付着部に圧痛がみられることがあります。靭帯あるいは腱の付着部が炎症を起こしているのです。このような多発性付着部炎が著しい患者さんは、線維筋痛症の圧痛点が陽性に 出ることが多く、関節の腫れがみられない場合は線維筋痛症と診断されているケースが多いと思います。また、関節が腫れる場合は関節リウマチ、あるいは、関節リウマチの疑いとされてる場合が多いのではないでしょうか。

レントゲンやCTなどの画像所見ではどうかと言いますと、通常のレントゲン写真では脊椎の靭帯棘(syndesmophyte)、あるいは椎間関節の癒合、仙腸関節の不整、硬化などがみられます。踵骨棘や膝蓋骨骨棘などもこれに関連したものと言われています。昔から多くの医師が強直性脊椎炎の典型的レントゲン所見として認識していた「竹の節変形」(bamboo spine)は非常に稀です。逆にそのために診断されにくいといえます。では診断がそんなに難しいのかという疑問が湧いてくると思いますが、脊椎の可動性(ショーバーテスト)、多発性付着部炎、そして、レントゲン所見から異常を見極めれば難しいとは思いません。
脊椎関節炎の中にはどのようなものがあるかといいますと、乾癬性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、腸炎性関節炎、ライター症候群、ブドウ膜炎由来の関節炎、反応性関節炎などがあります。最近、奈美悦子さんが掌蹠膿疱症性骨関節炎で苦労されたと報道されましたね。このように皮膚病などがあると気づかれますが、実際には皮膚病や腸疾患など何もない患者さんが多いのです。これを分類不能の脊椎関節炎と呼ぶ研究者も多いと思います。しかし、“分類不能”というにはあまりにも患者さんの数が多すぎると思います。

さて、どのくらいの患者さんがいるかというとですね、WHOのメンバーが中国で行った調査があるので、そこから引用しましょう。最近、出版されたリウマチ入門第12版(発行:萬有製薬、編集:日本リウマチ学会)にこの一部が出ています。血清反応陰性脊椎関節症の疫学の項目に強直性脊椎炎のアジア人の有病率(0.26%)は白人とほぼ同等という記載があります。この数字は関節リウマチの半分の有病率ということになりますね。この本の強直性脊椎炎の項目を見ますと、臨床像では靱帯付着部炎と仙腸関節炎が詳しく書かれています。また、強直性脊椎炎の鑑別診断では線維筋痛症が上の方に上げられています。線維筋痛症の治療だけでは症状がよくならない場合はこの問題も考えてみる必要があると思います。

線維筋痛症を心配されて昨年夏までの4年間(2000年7月-2004年8月)に、長野県以外から当科を受診された方は約100名いらっしゃいます。長野県内からはその数倍です。長野県以外から訪れる遠来の疼痛患者さんの大部分はこの多発性付着部炎を合併しています。受診患者さんの分布地図をお見せしましょう。長野県内の方は線維筋痛症単独という患者さんが多いように思います。線維筋痛症単独の場合より、脊椎関節炎がもとにある方の方が症状も強く、時には障害が進むためでしょう。
(しばらく脊椎関節炎の内容を続けます)
2000年7月-2004年8月の4年間に
長野県以外から当科を受診された方の分布図
分布図
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