身体の広範囲に強い痛みを起こす原因不明の病気があります。検査をしてもほとんど異常がないと言われ、日本の医療機関では充分に治療されることが、まだ少ないようです。しかし、ほとんどの患者さんはリウマチなどを心配して受診することが多く、最近はリウマチ科医師の間で関心がもたれ、すこしずつですが、国内に浸透しています。また、アメリカ留学などで、現地の教授から薫陶を受け、日本でも真剣に対応しなければいけないと感じている若い医師達も増えて来ています。

頻度など

欧米のリウマチ科ではよくある病気と考えられており、診断と治療は少しずつですが、確立されつつあります。有病率は米国ウィチタの調査では、女性で3.4%、男性は0.5%、人口の2%といわれております。原因はまだ解明されておりません。なんらかの免疫異常がかかわっていると言われています。外傷やストレスがきっかけになることもあります

症状について

首から肩にかけての痛みやしびれ、上肢の痛みやしびれ、腰背部の疼痛やこわばり感、臀部から太ももの痛みと張り感、膝から下腿の痛みやしびれ、眼の奥の痛み、口腔の痛み、頭痛などの様々な疼痛症状があります。そのほか不眠、疲労感、頻尿、下痢、月経困難、生理不順などの身体症状、悪夢、焦燥感、不安感、憂鬱感などの精神的症状、あるいは、全身のこわばり感、冷感、四肢のだるさ、関節痛、自覚的な関節の腫れなどのリウマチ症状を訴える患者さんもいます。疼痛箇所が移動したり、気候によって疼痛レベルが変化することもあります。

検査について

この病気が診断できる特別な検査はありません。時に血液検査で抗核抗体の弱陽性あるいは補体値の低下など免疫学的な軽度の異常がみられることがあります。レントゲン写真、CTスキャンあるいはMRIでもこの病気特有の異常所見はありません。
膠原病など(関節リウマチを含む)で、初期にこのような症状が出現することがあります。軽症の膠原病や,膠原病の予備群の場合もありますので,血液検査などは確実におこなったほうがよいでしょう。

診断について

1990年に発表されたアメリカリウマチ学会の分類基準(この分類基準は、第1項が広範囲疼痛既往歴の定義、第2項が18ケ所の指圧点の記述からなります)を参考に診断されます。全身広範囲の疼痛の既往歴のほか、特徴的な指圧点が挙げられています。18個のうち11ケ所以上に指圧による疼痛を感じると陽性と判定されます。押す力は約4kgで押すようにとあります。また、他に病気があっても線維筋痛症の診断は除外されません。

注:分類基準の第1項目には全身広範囲の疼痛の既往歴があることとあります。広範囲とは左半身、右半身、上半身(ウエストより上)、下半身(ウエストより下)、それに加えて、頚椎、前胸部、胸椎、腰部など体軸の疼痛を含みます。これらすべてに痛みがみられる場合を広範囲の疼痛としています。(F. Wolfe et al,  Arthritis and Rheumatism, Vol.33, No.2, p.160, 1990)ただ、実際には、全身すべての疼痛の既往を記憶している患者さんは多くはありません。部分的で限局した疼痛であっても、各医師が比較的柔軟に評価し診断しています。ほかに病気があっても線維筋痛症の診断はされるわけですが、シェーグレン症候群あるいは他のリウマチ性疾患が基盤にあることがあります。これらの診断をするためには各種の検査が必要です。

治療について

まず、抗炎症剤(痛み止め)を試みますが、効果がみられない場合が多いようです。精神安定剤あるいは抗うつ剤(SSRI、 SNRI、三環系の抗うつ剤など)を少量投与します。ステロイド剤は効果がないという論文があり、使用しない立場をとっている医師が多いのですが、時にはステロイド剤の局所注射などにより疼痛あるいは疲労感が数日間でも改善する患者さんがいます。だれにでも効果がみられる薬はなく、効果がない場合はいろいろな薬を数週間から数カ月ごとに試してみることになります。

軽い運動(ウオーキング、体操、水泳、エアロビクス、ヨガ、太極拳など)そのほか指圧、マッサージ、カイロプラクティックなども有効な場合があります。個人差がありますので、誰にでも効果がみられるわけではありません。自分で積極的に運動療法を進めることにより、かなり症状が改善した患者さんもいます。自分で積極的に対応する気持ちが大切です。

仕事を含めて1日の過ごし方の反省をしてみた方がいいでしょう。イライラや不安など心理的な葛藤が痛みの増強につながるようです。また、職場や家庭内のトラブルも痛みの増強因子となることもあります。医療関係者との連帯感も無視できないことです。また、うつ症状など精神症状が強い場合は薬剤の使い方も含めて、リウマチ科では充分な対応ができません。精神科的な症状が強い場合は心療内科あるいは精神科と連携して治療することも必要です。

予後について

線維筋痛症は生命にかかわる病気ではありません。通常、数カ月から1〜2年で症状が改善される方が多いようです。しかし、症状が続いており、発病から数年たっても疼痛レベルが増強し、家事が出来なくなった、歩行が困難になったなど、日常生活に支障をきたす患者さんも相当数存在します。

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